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≪ バベルの塔、教訓と絵画集 ≫

The Tower of Babel
ブリューゲルの作品初め、教訓として心すべきテーマであるバベルの塔の建設。






Frans Francken U,1581-1642,  Joos de Momper U, 1564- 1635  ベルギー王立美術館蔵



今年2006年5月、あまり期待していなかったベルギー王立美術館でこの絵に遭遇した時は驚きであった。
ピーター・ブリューゲルが描いた 「 バベルの塔 」 が唯一記憶に残っているイメージであったから、
この Frans Francken U &  Joos de Momper U の堂々とそびえるバベルの塔、、
その壮大さに圧倒されたのだ。
高台から見下ろす視線で描かれるのが多いのに、、この絵は下から見上げる視角である。
1階の正面がグッとせり出して描いた視点が素晴しい。

手前に、建設を指揮する王の一団を大きく描き、塔との間に、様々な作業現場と携わる人達を小さく小さく描く。
遠近感の演出が際立っている。 そしてその向こうに建つバベルの塔、、その巨大さが圧倒的に見える。

描かれたのは、ブリューゲルの絵の50年程後である。

2006年5月ベルギー王立美術館訪問記

■◇■  ■◇■  ■◇■

★ 『 バベルの塔 』 の出典は、、、旧約聖書の創世記にある。
ノアの箱舟の物語の後、ノアの子孫が繁栄した記述の後、
独立したアブラハムの記述の前に位置する。

◇ 旧約聖書、創世記第11章 ◇
[ 日本聖書協会訳 ]

世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。
東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。
彼らは、「 れんがを作り、それをよく焼こう 」 と話し合った。
石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。
彼らは、「 さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。
そして、全地に散らされることのないようにしよう 」 と言った。

主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、言われた。
『 彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。
これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。
我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。 』

主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。
こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。
主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。



★ <石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを>
  <天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。 そして、全地に散らされることのないようにしよう。>
  と淡々と記述されたいる。 「人間の思い上がり」と非難されるような内容ではない。
★ <彼らが何を企てても、妨げることはできない。 直ちに彼らの言葉を混乱させ、、>
  とあり、、神の怒りに触れ破壊へ、、と言う過激なものでは全く無い。

しかし、、この記述自体が、我々が生きている現代の旧約聖書の記述に過ぎない。


いわゆる旧約聖書の元になる話は、、民族の歴史or民話or神話の類なので
キリスト教のみならず、ユダヤ教、イスラム教にも関連する歴史以前の話なのである。

キリスト教に限定したとしても、、旧約聖書、新約聖書etcの正典、外典、偽典、、他とあり
多数の写本等を下地に、、後世の宗教権威者の都合で、取捨選択、歪曲校正加筆を繰返してきたもの。
AD90年のヤプネル会議、AD325年のニケーア会議、AD393年のヒッポ宗教会議、カルタゴ会議、、
と宗教会議はあまたある。 これら以前の原型は如何なる物か?? 真のバベルの塔は!!

( キリストの妻を売春婦に仕立て代えられたのも、宗教会議での決定。
  というのが、ベストセラー、ダ・ヴィンチ・コードのお話、、、 )


と、意気込んでみても、単なる知的好奇心の旺盛なだけの一般人にとっては、時間の無駄なのである。
( 何事も現在の姿が全てではない、、そのまま信じ切るのは愚かである事を認識するだけでよい。 )


■ <バベルの塔>の絵画に出合ったならば、、
  人間の努力、、後世に残る偉大な物を創ろうとする気力と、それを達成する為の技術革新を含めた努力。
  しかし、それを達成し終わるまでの意思統一の難しさ、、、、起こり得る困難にどう対処するか!!
  こういう事への各人の教訓ととらえるだけでも、、大いに啓蒙される芸術テーマである。




↓ Frans Francken  &  Joos de Momper U のバベルの塔には、、↓
赤い炎、黒い煙、窯、、
レンガやアスファルトの描写であろう。
働く多くの人達、、出来上がりつつある壮大な塔
未完成である部分は強調されていないで、
創造中の作業部分が前面に出てきている。


前向きに表現されている好感の持てる芸術作品である。




↓ そして、、有名なブリューゲル ↓


ウィーン美術史博物館で圧倒的に存在感を誇るブリューゲル所蔵品の一枚。

Pieter Prueghel ( 1525-1569) , 1563 , 114x155cm,

岩山の上に建築されているようである。
クレーン、、背景の町並み、帆船、、描かれた時代の風景。
未完成部分が強調されている。
未完の部分が廃墟のようにも見える。
意図した事なのか? 混乱して中止のイメージが強い。
教訓色が強くなる。


私がウィーンを訪れたのは、1995/05
↓ 高校2年の娘に海外旅行の仕方を教える為に連れて行った。 ↓





ブリューゲルはバベルの塔を3点描いている。
↓ 1563 , 60x74.5cm , Museum Boymans-von Beuningen , Rotterdam ↓
塔の建築は進んではいるが、、
暗雲たちこめ、景色も暗く活気が無いが、
人は沢山描かれている。

2点しか現存していないようである。



↓ Abel Grimmer ( 1570-1619 ) ↓



上の絵を真似したような絵 ↓

Bertha Palmer Lane, 1932






背景に高層建築建ち並ぶ都会が、、、
壮大な塔であるバベルの塔が、引き立っていない。
反ってグロテスクな印象を与えてしまう。


細かく描かれてはいるが、、
絵に引き込まれる要素に欠ける。








↑ 下層部分が角ばり、、全体に現代のビル建築のイメージに近い。
細かく描かれ、、整備された道路までが、、
神代の寓話ではなく、現代に近い寓話の印象を与えている。 ↓






フランドル派 17世紀初頭  50cm X 71.5cm プラハ国立美術館蔵






Van Cleve




Hendrick Van Cleve ( 1525-1589)




Lucas van Valckenborch , 1594




Marten van Valckenborch T ( 1534-1612 )


















Nuremberg







French Bible, 1250





41x28cm, London, 1423

























Gustav Dore , 1866


M. C. Escher



高くそびえる巨大な塔を描けば良いのではない。
人間を細かく描けば良いわけでもない。

何処まで深く考え、、何を訴えるのか!
芸術作品は、、千差万別である。

感動できる作品に出会うのは、、少ない。
求めて、出会うことが出来れば、大いに味わおう。


出会いから、その後の生き方に有意義な影響、、
機会を与えられるのではなく、、自ら求め
自ら認知して、啓蒙される。

日々の自覚で、人格、品格は大きく差がでる。



現代のバベルの塔と意味づけたくなるが、
これは、全く異なる警鐘であろう。


ルーブルに バベルの塔 があっただろうか??
思い出せないのだ。  確認に行かねばならないだろう、、、、
思考が思いがけない方向に飛んでしまった。


この頁は、横幅1024ピクセルを前提としています。
今回が初めてです。
800ピクセルで見る人も、まだまだ居られると予想されますが、
大きな画面では、
800ピクセルの頁は貧弱に見えます。
当方も、少しずつ
横幅1024ピクセルを前提とした構成にする予定です。
<2006/12掲載>




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