有田・しん窯・青花 窯元 訪問記

ゴールデンウィークに有田の陶器市に行ってきた。 期間中は、博多からJR快速≪有田陶器市号≫が頻繁に往復し、特急並みの速さである。 私は関西在住なので、百名山の1つ九重山(久住山、九州最高峰の中岳1791m)登山の帰りに寄り道した。 小さな予定ではあるが永年の課題を同時にクリアーした。 往路は夜行フェリーで別府着、帰路は福岡からJALの早朝便がかろうじて確保できた為に実現した。 当日は時折雨が降る天気。

備前焼、丹波立杭焼、信楽焼、清水焼 と 陶器市には毎年足を運んではいるが、規模の大きさでは有田が一番ではないだろうか?
JR上有田駅から有田駅まで約4キロmにわたって人の波が繋がっていた。 上有田駅で大半の人が降車してしまったが、私は≪しん窯≫訪問が目的だったので、有田駅で下車。
≪しん窯≫は≪青花≫という手書きの銘で出回っているだけなので、有限会社しん窯を知らなくとも≪青花≫ならご存知の方が多いかもしれない。

私が≪青花≫を買い始めてから20年以上になる。 1976年に創業とあるから創業時の勢いのある時に買い集めた事になる。 ところがここ10年程はナカナカ気に入るものが大阪のデパートに並ばず、欲求不満気味だったので一度窯元に行ってみる必要性を感じていた。
線に手書きの風味あり、ダミも優しく、特に呉須の柔らかい色と釉薬の温もりとの合体が、食器として毎日使う者には、コダワリの条件にはまり込んでいたと言う事だ。

直径18cm大のお皿。 20年前に買ったお気に入りだが、それ以来売場で見た事がない。 他に直径27cmのテッセンの深ばちもお気に入りだが、大きすぎて使ったことは無い。 ご存知だろう! 紅毛人の絵
最近はこのての女性向けの絵柄ばかりで、飽きが来る。
では、≪青花≫の産み出される所をご紹介しよう。
幸いにも工場内見学自由、撮影OKというOPENさであった。
GWというのに工場内は作業中、全員出勤ではないかもしれないが。


JR有田駅から、2kmはあろう。陶器市の地図だと近くに思えたので歩いたのだ。 帰りは当然タクシー利用とあいなった。


店内。 値段は表示価格のままで販売。
陶器市でも値引きはなく 「引いた値段です」 とのたまう。


昨年のGWは、マイセン窯の工場を見学したけれど、そこは現場ではなく見学の為の実演という価値のない見学であった。
絵付けスペースの半分。画面左側にもある。


正に現場である。 絵付けの仕方などは既に知っている。 どのような職人さんが絵付けをしているのかが知りたいのである。 焼物の魅力は職人さんの技に惚れる事にあるのだから!


下書きなしで直接描き込んでいた。 空白の部分とのバランスが難しいのだが、そこが職人さんの経験次第なのだ。 無造作に描いていても、リズムがあり、メリハリがあり、バランスが良いのが職人さんと尊敬される所以である。 それが無ければ単なる職工である。
マイセン窯では、穴の開いた型で木粉を転写してから線描きしていたから、描くと言うより なぞると言うべきである。
青花は正真正銘の手描きである


南蛮船の線描きは意外と難しいはずなのだが、、、

殆ど直線で構成されるから描き易い、
ところがそこを履き違えると駄作となる。
直線で筆の描味を出せる経験を積んでいるか?
空白部分が寂しく見える危険を含んでいる。
それを知らなければならない。

単純な絵柄はごまかしが効かない、実力がそのまま現れるのだ。
←←は、20数年前に購入したもの、割れてしまった。 菊花型生地だからバランスが良い。 店頭ではもう無い。

↓左は、同型の小鉢。 ↓右は単なる小皿、稚拙な作品と言わざるを得ない。 南蛮船のデザインは再考を期待する。


だみ入れ。 ≪だみ≫の魅力は日本独特?
マイセン物では気がつかない。 勿論ロイヤルコペンハーゲンでも知らない。


『生かすも殺すもだみ次第』 と言われる程重要。
だみの魅力に気がつかずに焼物を好きと言うなかれ!
←は私の好きな清水焼の<だみ>
柔らかいリズムがある。
     →→ は
<青花>のだみ。 悪くないが、この紅毛人が落っこちそうなのが気になって仕方がない。 描く時に気が入ってなかったのだ。


絵付けの後の乾燥



うわぐすり掛け。 少し青みを帯びて、ゆったりとのったガラス質は温かさが素晴らしい。


窯入れ。 一つずつ丁寧にマットに乗せていた。
コーヒーカップが斜めに傾斜している理由は? スペースの問題か取手の型崩れ防止か?


窯はガス窯だと思うのだが、確認するのを怠った。
まさか電気ではあるまい。



焼成後の、底のバリ取り。 回転ヤスリの上で丁寧に磨いていた。 昔、清水では、紙やすりで底を磨いてから包装してくれていたのが懐かしい。
↓は昔買ったものばかり。 深バチは直径27cmのテッセンの花と葉蔓である。 徳利も、形色合い全てが優しい。 左端の蝶も形が面白い。

でも最近は全くお目にかかれない。 安易な成型物しか目に付かないのが残念なのだ。 右端の陶器は、壺屋焼きの今や大物、相馬氏の作品。 買った時は「相馬君」と呼ばれていた。 私の目に狂いは無かった。

掲載順が違うが、成型の型の数々。 型が残っておれば古い物でも何時でも作れるはずだ。

型から出した後の成型用機械だろう。
写っていない左側にも並んでいた。

今回の有田訪問は、昔に手に入れた≪青花≫と同じような物を見つけるのが目的だったのだが、結果は少し不満が残った。 が、工場見学が自由に出来たという願ってもない経験が増えた事は、大満足であった。
今回購入したコーヒーカップ3客、植木鉢、タイル、小皿などを含め、我が≪青花コレクション≫は50点を超えるだろう。
大皿、中皿、小皿、カレー皿、グラタン皿に向付、My湯飲みに来客用湯のみ揃え、徳利、ぐい呑み、江戸紋に至っては、ドンブリ、茶碗、中皿、小皿、ワイングラスに湯呑みと、馬鹿みたいに揃っている。

隣の<源右衛門窯>にも寄ってみたが、相変わらず値段だけの中味はない。 特に普及品の粗悪さはひどい。 染付けとは言えない。 但し、高額品には良い出来の物が見られたが、コーヒーカップ1客にに6万円出すなら清水焼の祥瑞を買う。

帰りにも、有田駅前で3割引きの垂れ紙に釣られて、散財してしまった。 ≪宮崎祐輔≫作のマグカップ。 ラクダの絵にアラビア文字が書かれているエキゾチックな物。 値切る過程で 「2客買ったら消費税要らない」 に またまた釣られた馬鹿な私!!


上の方に赤く書かれているのがアラビヤ文字
これが無かったら買わなかっただろうに!
当然こちらの方が高価

竹やぶにいるには、ウサギなのだが、そう見え難い。
描いた本人は、気がついていないだろう、説明がないと兎に見えない事を!

最初は、単なる九重山登山だったのが、寄り道したおかげで大散財。 今回の旅の総費用で、なんとヨーロッパの往復航空チケットが買えちゃうではないか!! 勿論格安航空券だが、、、

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26年目にやっと出合った珈琲カップ        → 祥瑞の珈琲カップ詳細画像へ
マイセンの年2回の工場開放日に2度目の訪問 → ドイツ・マイセン磁器工場開放日 訪問記

後日、しん窯様よりMailを戴き、
訪問記を開いてずばり感動いたしました。早速プリントアウトして工場の皆さんに回覧しました。鋭い指摘をいただいて作る姿勢に大きな影響を与えてくださいました。 との嬉しい内容でありました。

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