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■物語の展開の良し悪しに関わらず、その場面でのヴェルディの激情表現の音楽が、グィッグィッと聴く者の心の同じモノを共鳴させ増大させていく。
その激情の性格が、<愛情><人に対する怒り><恨み・復讐><希望を受け入れられぬ寂しさ・不満><悔しさ>、、と、真剣に、積極的に、自力で人生を切り開いてきた人間にとっては、幾度となく経験し、心の奥底にしまい込んでいるものなのだ。
この激情なるものが、物語では恋愛であっても、恋愛以外の激情を心の奥底に持っている個人にとっては、共鳴・増幅して行くのであろう。 悲恋のストーリーであっても鑑賞するものはストーリーそのままに同調するわけではない。 自分の内面に何もないのなら、簡単にストーリーの言葉どおりの展開に引きずり込まれてしまうのだろうが、、、
■アイーダを大スペクタクルオペラととらえるだけなら、ヴェローナのアリーナ、エジプトの砂漠と野外劇場で鑑賞するのも面白いものである。 しかし、能動的に生きていく人間の内面の共鳴ととらえれば、個人的な空間での、ヴェルディとの付き合い(対峙)が必要となってくる。
人間には秘めたる内面がある
アムネリス演じるケート・オールドリッチ
■ヴェルディの激情というのは、人気取りのドラマの展開を現実と錯覚したり、他力本願、流れに乗って、軽薄に、、、と、心に深い傷のない生活から生まれる感情とは異質のものだろう。
物語の展開に気を取られたり、歌手のセックスアピールに心を奪われるのも楽しいけれど、ヴェルディの音楽にはもっともっと貴重なものがある。 歌手の歌うメロディ、、あくまでも伴奏の短い音形、、、どうしてこんな音を思いつくのだろう、、と、、、Mozart、Verdi 天才だと単純に片付けては終われない。
人を愛せる事は、最大の喜びの一つ。 しかし、、 愛する相手の思いが別の人に向いているという状況なら、満たされぬ愛情は、渇望の為 より燃え上がり、怒りの要素も加味され、、、どちらにも変わる激情となってくる。 人を愛する事自体は素晴らしい事なのだが、、 |
題名は<アイーダ>で、ラダメスとの遂げられぬ恋愛が主題のようなのだが、 ラダメスが勇猛な将軍なのに、自分の立場を自覚し自己統制が出来ないメソメソとした人間に設定されているので、アイーダとラダメスを中心に観ていると、白けてくるのだが、、、 これは、幕が開くなり、「助けて!」と気絶し、綺麗な絵姿を見せられて、惚れ込み信じ、説教されると直ぐに洗脳され、試練に遭うと、魔法の笛に助けを求める情けないタミーノ王子と同じである。 オペラ<アイーダ>では、常に中心で演じているアムネリスが主役になる。 <オテロ>におけるヤーゴと同じである。 アムネリスの音楽に最もヴェルディの才能が入り込んでいる。 |
「お前の運命は、憎悪と復讐に燃える私の手の中にある- - ッ」 こういう激情的な言葉は、一種の快感ではなかろうか!! 恋愛に関わらず、仕事上でもいつもジャマする憎たらしい奴はいる。 そういう輩にこう叫んでみたい人は沢山居るはずだ。 |
恐れるがいい- -ッ |
自分が有利な立場にいる状態での 敵に対する攻撃、 怒りをぶつけ、、 優越感を味わいながら、 敵をののしり倒す 抑圧された鑑賞者なら、 共鳴の快感だろう、、、 |
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一時の幸せに酔う、 こういう瞬間は、都合の良い事ばかり想像してしまうものだ、、、 幸せな瞬間があるから、、 それが短いから、 次に訪れる「思い通りにならない事態」が、、より激情的になる。 |
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「祖国を選ぶか、 個人的な愛情を選ぶか! お前は王の娘なのだ!」 ラダメスより、 はるかに男性的なアモナズロ! 恋愛なんて一時的な幸せな錯誤 |
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明確な性格の役は 演じる方も陶酔して 心おきなく演じられる |
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錯誤による短い幸せの後、一転して、最悪の現実に 消え去る幸せを、あらゆる手段で停めようと、、 「お慈悲を!」 哀願 「引き渡したのは私!」 反省 「罪なき者を罰するのか!」 脅し 「王女の愛した人を罰するのか!」 脅迫 |
↓ ↓ 怒りに変えてしまったのねッ 私の比べ様もない愛情を ! 恐ろしいのは、怒りよりも 貴女の同情だ !!!! ↓ ↓ 愛の激情も、怒りの激情との 区別がつかなくなってくる |
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裏切り者は死罪だ! |
裏切り者は死罪だ! |
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↑最高の山場 怒りの頂点の音楽 激情の爆発の音楽 お前達に、 天の呪いが、 天の報いが、 降りかかるがいい--ッ |
思い通りにならなかった不幸を その憤りを、爆発させる音響、、 この場面、満足させてくれる演奏は、中々お目にかかれない。 ミュンヘンで聴いた準メルクル指揮がまあ、良い方か、、、 オケの実力のせいか、 あっけなく終わってしまう演奏に出くわすと、欲求不満になる。 |
■凱旋行進曲やダンスシーン等、登場人物の圧倒的な多さで、気持ち良く欲求不満を解消するオペラであると共に、激情の共鳴・発散と内面的にも、大いに欲求不満を解消できるオペラであります。
ただ単に悲恋を強調したり、単純な悪役を配してイジメを演じらせるという、パターン化された筋書きで、鑑賞者の気を引くのではなく、人間の奥深い情を音楽で主役にする素晴らしいヴェルディ、、、、トラビアータ、リゴレット、トロバトーレ、仮面舞踏会、そして、感情・言葉をはるかに凌駕した音楽のファルスタッフ、、、最高ッ!
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