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≪ゴヤの黒い絵、全14作品≫


ゴヤの黒い絵(3)



 



黒い絵と言われる14点は、プラド美術館にあるが。
聾の家の壁から、、カンバスに移されたもの。

元々描かれた場所は
■ 2階サロン
アスモデア
異端審問
運命の女神達
棍棒での決闘
砂に埋もれる犬
読書(解読)
自慰する男を嘲る二人の女

食事をする二老人(1階?2階?)

■ 1階食堂
レオカディア
ユーディットとホロフェルネス
魔女の夜宴
サン・イシードロの巡礼
我が子を食らうサトゥルヌス
二人の老人


カンバスに移された後に、、
相当に 修正、加筆があったらしい。
X線検査の結果、、
初めは、壁に風景画が描かれ
後日に、その上に黒い絵が描かれた。
その下の風景画と、上の黒い絵とも関連があるそうだ。

* 黒い絵の下の風景画が、ゴヤが描いたものか
ゴヤが家を購入する前に描かれていたかは不明。



* 聾者の家 *
ゴヤが 1819-1822 の4年間ほとんど外出することなく住んだ別荘。
10ヘクタール農地の中の2階建てで、、現存していない。
前の住人が耳が不自由であった為に、聾者の家と呼ばれていた。



一枚一枚それぞれに、
ゴヤが集約した教訓、皮肉が感じとれるのだが、、、
黒い絵として、全体をまとめる緻密な関連性があるとは思い難い。
一枚一枚に個性がありすぎる。  全体のバランスは悪い。
その時々に思索し、昇華した発想を一枚一枚描き、、
その積み重ねの結果だろう。

黒い絵全体としてより、一枚一枚を個別に取り上げる方が意義がある。

全ての絵の意義、思いを、推し量られる訳ではないが、
主なる絵は、、時代を超越し、地域性をも超越し、、
勿論個人的な悩みからは遙かに離れ、、普遍的な問題定義に昇華されている。


ここでは、個別の絵には踏み込まずに、全体の紹介に止まる。



◇ ◇ ◇ 1階食堂 ◇ ◇ ◇


レオカディア・ヴェイス 147 x 132 cm

Dona Leocadia Zorrilla (内縁の妻 and 家政婦)
ドーニャ・レオカディア・ウェイス・ソリリャ
1813年(67歳)、妻の死の翌年、
ゴヤは、25歳の人妻レオカディア(1788年生まれ)と同棲し、翌年娘をもうける。
67才で、、、凄い精力である。
レオカディアは、宝石商イシドーロ・ヴェイスの妻であり、不貞の罪で告訴される。
不貞の相手は??、、ゴヤを含め諸説あり、??である。


      ↑ X線写真 ↑

プラド美術館に現在飾られているのは、「お墓に寄りかかっているレオカディア」であるが、
X線写真では、「暖炉に寄りかかるレオカディア」である。

お墓と顔を覆うヴェールは、後日加筆されている。
(本人の加筆か他人の加筆か不明))

◇ この絵だけが、、ゴヤ自身の個人的なテーマに過ぎないのだが、、、、





ユーディットとホロフェルネス

旧約聖書外伝からの主題
イスラエルの未亡人ユーディットは、敵軍アッシリアの将軍ホロフェルネスを誘惑し
熟睡中にその首を切り落とし、イスラエル軍に持ち帰った。

女性の残酷さ、or 勇敢さ or 救国の女傑 or レオカディアとの関連 ??




魔女の夜宴 140 x 438 cm

悪魔が牡山羊の姿で現れ、魔女たちの夜宴を主催するという民間伝承のお話。
暗い雰囲気だけで、、具体的な教訓は、、、探り難いのだが、、、
右端で椅子に座る女性のみ別世界の存在だ。

この絵の下層だけは、、何も描かれていない。
カンバスに移される際に、右端1mが削られたそうである。




サン・イシードロの巡礼 146 x 438 cm

サン・イシードロは、マドリッドの守護聖人で、祭日は5月15日。
お祭りなのに、民衆の顔は、愚かで醜い。

下層の絵に右にアーチ橋が描かれていた。




我が子を食らうサトゥルヌス 146 x 83 cm

サトゥルヌスは、ローマ神話の農耕神で、主神ユピテルの父。
鎌で父ウラノスを去勢させ権力を奪う。
予言で、自分と同じように、我が子に支配権を奪われると言われ、
次々と我が子を食らって殺した。
ユピテルだけが、母の機転で救われる。

狂気のサトゥルヌスの表情、、残酷な瞬間、、、
ゴヤが、この絵の前で生活していたとは、、理解し難い。
凄い芸術作品だと言うよりは、、おぞましくて付き合いきれない絵だ。

男根の勃起が修正で隠されているそうである。




二人の老人

描かれた二人の品格の相違、、、
求道者のような老人と、、悪or死の誘惑を囁く邪悪な者。
ゴヤ自身なのか、正しい人間の偶像化なのか、、

「二人の老人」 という呼称は相応しくない。
「正しき者への邪悪な囁き」とでも言った方が良い。






◇ ◇ ◇ 2階サロン ◇ ◇ ◇



アスモデア 123 x 265 cm

聖書外伝トビア書の、邪悪な愛と肉欲の悪魔アスモディア
赤いマントの女性アスモディアが男性を魔女の夜宴へ連れ去るという話なのだが、、
描かれている情景は少し違う。
群がる騎兵達と、それに銃を構える2人の兵士。
空中の男は、砦のようにも見える岩山を指差す。

よく判らない。




異端審問への行列

異端審問への憎悪、、恐怖、、それだけなにか、、
うったえてくるものに欠けるのではいか、、





運命の女神達 123 x 266 cm

幼児から運命の糸を取り出すクロトー(紡ぐ)
レンズで運命を見るラケシス(割当)
鋏で運命を断ち切るアトローポス(断つ)
こちらを向く後ろ手に縛られた運命に操られる人間。

最初に描かれた風景画の上に、人物像だけが書き加えられたらしい。




棍棒での決闘 123 x 266 cm

土地に根付いた者同士の殴り合い。
逃れられずに戦うしかない。
スペインの内乱を表したものではあるが、、、
それだけに止まらず、、あらゆる逃れようのない諍いに拡大解釈できる画期的な表現である。


個別感想へ 黒い絵(1)




砂に埋もれる犬 134 x 80 cm

運命の抗し難い流れに怯え、見守るしかない、、、
それを自覚できれば、、 「 ダメで元々、、イッチョやってやるか! 」 と元気の出る絵でもある。

個別感想へ  黒い絵(2)



読書(解読)

読書とは軽すぎる題である。
重要な情報が書かれているのは明らかである。
発見、解明、、納得、、、そんなイメージがある。




自慰する男を嘲る二人の女

自己満足だけだと、、人にはあざけられる。




食事をする二老人

1人は食事をしているが、、もう1人は? 本を繰っているようにも見える。
一階食堂の2人の老人のように、片方が入れ知恵でもしているかのようだ。

教訓めいた内容は判読できない。




■ ■ ■ ■ ■ ◇ ■ ■ ■ ■ ■


全てが老熟した鮮明なるメッセージを内包している、、とは思えないが

挑戦的に生きて行こうとする人間にとって

考えさせられ、、問題解決を一段と上に上げてくれる絵画群である。



cf.  『戦争の惨禍』 版画集全作品



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